●村上春樹がカフカ賞受賞というニュースは、ネットで見る限り日経を除く全国紙四紙(読売・朝日・毎日・産経)の中で産経のみが熱心に扱っており、今朝のコラム「産経抄」にも取り上げられていた

ハルキの作品でカフカといえば、そのものズバリ「海辺のカフカ」である
コラム子も、この作品に「現実と非現実とが交錯する」世界を見、「作品そのものにカフカが息づいている」としている


●かつて「海辺のカフカ」の公式HPがあったが、いまは閉鎖されている(その内容は「少年カフカ」にまとめられている)
しかし、ネットを調べるうちに「海辺のカフカ」の世界そのものを探求している「サロン・ド・カフカ」という素晴らしいHPを見つけた
http://homepage2.nifty.com/NASCI/kafka/salondekafka.htm


管理人のNASCI氏は、「海辺のカフカ」の世界を「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の続編としてとらえ、「境界」という概念をキーワードに、自己と世界の関係や、世界を包みこむ壁の存在などについて考察を進めている
これかからも時々お邪魔して、ハルキワールドを堪能させてもらうつもりだ


●(以下引用)………………………………………………………………

産経抄(2006年3月26日)
 作家、フランツ・カフカは一九二四年六月三日、四十歳で亡くなった。だが池内紀氏の『カフカのかなたへ』によれば「生前のカフカに世界はあまり親切でなかったように、死者に対してもそうだった」。作品も死もほとんど注目されなかったのである。
 ▼しかし、八十年余りの歳月はカフカの評価と名声を高める。五年前、母国チェコに国際的な文学賞「フランツ・カフカ賞」が創設された。歴史は古くないが、一昨年、昨年と、受賞者がその年のノーベル文学賞に輝いた。今や最も著名な文学賞のひとつとなった。 ▼その「フランツ・カフカ賞」の今年の受賞者に村上春樹氏(57)が選ばれたことには、どこか宿命的なものを感じる。村上氏の長編小説「海辺のカフカ」は、現実と非現実とが交錯する。題名もさることながら作品そのものにカフカが息づいているように思えてならない。
 ▼それだけではない。「団塊の世代」がまだ二十歳前後だった昭和四十年代、日本でもカフカを読むことが流行のようになった。『城』『審判』『変身』などをむさぼるように読み、カフカの故郷、プラハへの思いを募らせた人も多かったはずである。
 ▼むろん、当時の文学青年たちが、あの難解な小説をどれだけ理解できていたのかはわからない。ただ、カフカを読むことで知的に刺激し合い、競い合っていたことは間違いないのだろう。そうした「カフカ世代」を代表する作家が、村上氏であるような気がするのだ。
 ▼それはそうと、「フランツ・カフカ賞」の過去二年の「実績」から、村上氏にもノーベル賞の期待が高まっているという。そうなると、カフカへの関心も再び強まるかもしれない。知的な「たけくらべ」がよみがえってくれればいいのだが。